上海から広州に向かう汽車の中でのことである。そうとう退屈した私は食堂車に行ってみた。適当に座ってみて、周りを見渡す。ただ、寝ている人。お弁当が目の前にあるのに手をつけない人。混んでいるのに誰も食事していない。おじさんが首を振りながらけたたましく何かを言っている。私の前に、一人の女性が座った。すぐにカップルも同席した。おじさんがチケットを見せろと言う。見せると勝手に弁当が配られた。4つのそれは、やはり誰も手をつけない。私も、手をつけない。お腹がすいてきた。目の前の女性は英語が多少しゃべれた。助かった。わけを聴いても、ただ、お腹がすいてないからよとしか言わない。おじさんは、他の何もしない連中を追い出しはじめた。目の前の女性は時間が過ぎたからと説明する。駅員も来て何人かに説教しているようだ。とにかく、わけがわからない。女性と話しているうちに、我らも時間切れだとおじさんが言ってきた。まだ、弁当は手をつけないでいる。テーブルを離れる時に皆、弁当を持ってかえる。私もまねをして持ってかえる。なにがなんだかわからないまま、弁当はただで手に入り、自分の席でおいしく食べることができたのである。