さのばびっち!しっと!ふぁっくゆー!心の中でそう叫んでいる。
私は、一日バイクを借りてロンボク島を探索していた。マタランというロンボク島の中心街に差し掛かった、赤信号なので交差点でバイクを止めた。ポリスが出てきて笛を吹き、バイクをこっちに寄せろと合図する。何が起こったのかわからないまま、その指示に従う。話を聞くと、バイクを止めたところが停止ラインからはみでていたというのだ。
もう、ピンときた。要するにこいつは、何も知らないツーリストを捕まえて小遣い稼ぎをしているだけだ。
少しは抵抗してみたものの、結局100,000ルピア(1,250円)も取られてしまった。
少し走ってまた捕まった。今度は何も落ち度がないのだが、赤信号の時に一時停止をしなかったとかでいちゃもんをつけてくる。
頭に血は登っているが、相手が悪い。正論など通じない場所だと感じ取っていた。
のっけから、いくらだと聞いた。相手は笑いながらも175,000ルピアと吹っかけてくる。125,000ルピアに値切るのがやっとだった。金を貰えばとたんに態度が豹変し、やけに優しく、困っていることはないかと聞いてくる。そして、信号が赤なのに、こっちから行けと誘導する。
ここの警察は腐ってる。
それからというもの、大きな交差点は避け、時速も40k以上は出さず、慎重に走った。ポリスがいないかどうか、そればかり気にしながら走っていた。もう全然、楽しくなんかない。結局2,820円を取られてしまった。
その後、2時間くらい走ってクタビーチに着いた。
奇麗だ!それ以上の言葉が出てこない。感動している。何といっても色が素晴らしい。濃いブルーと華やかなコバルトブルーが、今まで見たことのない色彩で目に飛び込んでくる。
100m沖合いでは轟音とともに高波がたっている。ビッグウエンズディのように。
なのに、サーファーがいない。
とにかく、誰もいない。いや、遥か遠くのほうに人らしい姿があるのだが、誰もいないのに等しい。今、私はこの海を一人占めしているのだ。
これまで、たくさんのアジアやカリブの奇麗な海を見てきたつもりだが、これほどのものは今だかつてなかった。
私はずっと、その海を飽きることなく抱いていた。
先ほどの嫌なことを忘れることができた。