国境近くでバスに乗り込んできたホセが言う。
"俺が、ホンジュラスまで連れていってやるよ。心配しないでついてきて。"
奴は少しだけ日本語も操り、いかにも怪しい。
"で、いくらんんだ。"
と、私は聞く。
"30だよ。とっても安いだろう。10:45発のバスに間に合うように取計らうぜ。
超特急で走るよ。"
"いや、だめだ、そうだなぁ〜、20レンピーレス(100円)だったらお世話になるか。
それに、あと20分しかない。
間に合うわけがないからゆっくりでいい。"
彼はニッコリと笑ってOKした。
バスを降りると、待ち構えていた自転車タクシーが群がってくる。
ホセはそいつらをかき分けて、通り道を作ってくれた。
そして、彼の自転車タクシーは突っ走る。
無事イミグレに到着すると、ニカラグア側でなく、直接ホンジュラス側の窓口に案内される。
"いいんだ、こいつに5USDだけ払ってくれ。そうすれば全てOKさ"
とホセは言う。
ニカラグア側で並んでいたツーリストを後目に、彼のいう通りに、ホンジュラス側でパスポートと共に5USDを渡した。
中を見ていると、隣のニカラグアのチェックも同時にしてくれているようだ。
私は、グァテマラ、ホンジュラス、サン·エルサルバドル、ニカラグアの4カ国内で90日の滞在許可を取っている。
つまりは、ここではチェックはするもののスタンプは押されない。
しかし、私は頼んだ。
"記念なんだ。どうかスタンプを押してくれ。"
ホセも一緒に頼んでくれた。
ニカラグア側では面倒だったのか拒否されたが、ホンジュラス側では私の希望したすき間にスタンプを押してくれた。
私のパスポートはすでに白紙がなくなっている。
チェックを終えるとホセは急いだ。
それこそ、車輪がどこかに飛んでいってしまいそうになるほど足を回している。
まだ遠くに見える、すでに走り出しているバスに向かって、奴は口笛を吹きながら猛進した。
そのバスに飛び乗ることができた。
私はホセに、持っていたレンピーレスを全て渡した。
23レンピーレス。それで最後だった。
私は彼に感謝した。
そして、きっちりニカラグアのお金を使い切って気持ちが良かった。
バスは悪路を右に左にと揺れながら走り出した。