時間がゆるやかに過ぎていく。今日は何をしたのか。何を目にしていたのか。何を感じとったのか。昨日は何があったのか・・・どれもが幻想のような気になる。幻想にお金を払い、幻想の中で生きているだけ。リアルな瞬間も時間が過ぎれば幻となって消えていく。
それでもいい。記憶の中で生きるよりも今を生きたい。何をどれだけ感じ取れるかが活力のバロメーターになる。今の自分が好きだ。洗いざらしの何もない自分が好きだ。
ベトナムに来て、トラン・アンユンには出会えなかった。トニー・ブイのしたたかさとやさしさにも出会えなかった。
そんな幻想と追いかけっこしながら、サイゴンにいる。