壁の上のほうに、大きく漢字で“達成”と書かれています。思わず近寄り眺めます。そうすると、中からおじさんが出てきて「よく来たね、まあ、入りなさい。」と手招きします。中に入れてもらうと、おじさんのおとうさんも加わって、もてなしてくれます。ただの通りすがりの私を・・・。
地図はないかと本屋に入りました。ところが、どうやらこの街には街地図が存在していないらしいのです。「そうか、それでは私が街を案内しよう。」と、かって出てくれたおじいさん。スワンさんは、教師を定年退職し、ペンションとこの本屋を経営しています。「さあ、後ろに乗って!」と、スワンさんはバイクにエンジンをかけました。ゆっくりと進みながら「こっちがガバメントオフィスだ、あっちがシティホール」と説明してくれます。「今晩このステージで、マノーラダンスが見れるんだ。若い女の子達のダンスだ。ラッキーだねぇ〜、ほ〜っほっほっ。」と、不気味な笑い。バイクはさらに鉄道に沿って走ります。切り立ったオクタル山を右手に、左手には田園が続き、空は、夕暮れのオレンジに染まります。その色合いの美しさは、言葉ではとても表現できません。やがてバイクは丘を登り、止まりました。「さあ、一緒にそこを登ろう。」と、彼が指差した頂上には小さな寺院の塔がそびえています。77歳のスワンさんが、走って登り始めました。
頂上に着くと、さすがのスワンさんも息切れしていましたが、塔に登って下界を見ると格別な世界が広がっていました。
最後には、オクタル山の麓まで行きホテルまで戻ってきました。私はお金を払おうとしましたが、受け取ってくれません。「今日はとても楽しかったです。」と握手すると、スワンさんは、「あっ、そうだ、ひとつ忘れてた。もう一回乗りなさい。」とのこと。行った先には床屋があり、「ここで、明日バスに乗りなさい。綺麗な鳥がたくさん見れる、君はハッピーだ!」と、仕事を中断させた床屋のおじさんを紹介され、『明日、バスの案内をしてくれ』と頼んでくれています。私は、「いや〜、明日は移動するかも・・・・」と、苦笑い。それ以上は何も言えませんでした。
マノーラダンス会場に来ています。時刻は、スワンおじさんの言っていた8時を少し回っています。ところが、まだ準備中。近くのバイクにまたがったおまわりさんに「何時から始まるのですか?」と聞くと、「ま、9時くらいだろ。」とあやふやに答えられ、続けざまに「後ろに乗って待ちなさい。」と手招きされます。
「彼女は・・・いないのか・・・そうか、紹介してやろう。」とサワップラシットおまわりさんは話します。冗談かと思ったら、本当に、片っ端から知り合いの女の子達のバイクを止めさせ、紹介してくれます。私は、“おいおい、あんた、おまわりだろう、そんなんでいいのぅ〜。”と、呟きながら、女の子達と挨拶しました。サワップラシットおまわりさんは、携帯に取り込んだ奥さんの写真を見せた後、「こっちは2号だ。」と、別の女性の写真を見せます。しまいには、エッチ画像まで見せてくれます。彼は、制服も着て、パトロールの公務中なのですが・・・。
ゆるい、ゆるいなぁ〜、この国は。見ているダンスも、ほんとうにゆるい。
ただ一言聞いただけで、こんなに暖かい人たちと触れ合えてしまう、パッタルンを、私も愛します。