私は、銀行の中にあるATMの前に立っている。後ろを見ると列が出来ている。緊張しカードを入れた。
私は、カードというものになぜか拒否反応を示してしまう。今までもクレジットカードというものは一切使ったことがないし、これからもそうするだろう。スイカだの交通機関のカードやショッピングカード等も便利なのだろうが、どんどん頭を使わなくなるものは、出来るだけ避けて通りたい。
しかし、銀行カードだけは仕方なく日本では使っていた。
今まで海外でカードを使用としたことがない。つまりは今回が初体験なのである。
まず一回、カードを入れてボタンを押してみた。どんどん画面が変わり、これでいいのか不安になる。画面に出ている英語は初めて見るので意味がわからない。冷や汗をぬぐい、取り消してしまった。外に出て深呼吸をする。
私は、コンパクトなデジタルカメラを買おうとしていたのだ。持ってきた円はとうとう底をついてきた。ドルはまだ残っているのだが、ここでは使いたくない。
何軒も店を廻り、「あっちの店では、この値段だった。」などと適当なことを言い、できるだけ値切ったつもりである。それでも、それはメモリーカードも含めると920リンギット(27,600円)もした。
再挑戦し、もう、なるようになれっとばかり操作をどんどん進めた。そうしたら、本当にお金が出てきた。レシートには残金が表示されていない。本当に手順が合っていたのか不安だったが、とにかく現金は確保した。
これからは、このカードが旅を支えていくのである。初体験は、体に痛みは感じなかったが、心には痛みを感じていた。