「はい、君はこっちね。よしっと。」「あっ、ちょっと、移動して、そう、ここで立っててね。」
私は、肩を腕で鷲掴みされ、あっちへ、こっちへと移動させられている。
今朝の獲物はと、海辺を散歩しながら、魚市場を見ているのが日課になっている。
タイにヒラメにカツオに、太刀魚・・・あとは、わけのわからない魚たち。
海老にカニもいる。タコやイカも、いつもその美味しそうな姿を見せている。
時には、サメなんかもいたりして、どうやって調理するのかを想像させられる。
うわ~、美味そうと、舌なめずりしながら、それらを見ているのが楽しいのである。
そんな時、人だかりがあり、なんだなんだと見に行った。
すると、なにやらスタッフらしき人が私に手招きをするので、ひょこひょこと人だかりの中に入っていった。
人だかりの中では、円形にレールが敷かれ、カメラが撮影監督とともに回る仕組みになっている。
その円形の中でアクションスター?が、ポーズの練習をしていた。
映画の撮影現場に紛れ込み、いきなりエキストラをやるはめになったのである。
私は、ただ腕を組んで立っているだけ。
周りの動きが悪いのは、たいした映画でない証拠である。
それでも、私がインド映画に初出演した記念すべき朝であった。