電光掲示板を眺めている。
私が乗るはずの電車が掲示板から消えてしまった。
私は、荷物の上に座ったまま、動けなくなっていた。
ローマが始発なのに、その電車は来ないのである。
ナポリ行きの電車は、1日30本以上運行しているのだが、一番安いチケットを買っている為、次の電車までは2時間半くらい待たなければならない。
ま、こういう事もあるだろうと、荷物の上で溜息をついた。
だめもとで、その前に来ている速い電車に乗れないか、駅員に聞いてみる。
大丈夫だ、これに乗れ!と指示してくれる。
なあんだ、乗れるんじゃん、と嬉しくなり、もう発車しそうな、その電車に飛び乗った。
ナポリに着いた。
私が乗るはずだった電車から試算すると1時間遅れだった。
ナポリセントラル駅のツーリストインフォメーションの看板はすぐ見付かった。
のだが、座っているのは2人の若い女の子。
こりゃ、たいしたことは教えてくれないだろうと、落胆する。
案の定、地図上で安宿はこのエリアと丸をつけられ、宿名や細かな事は知識がないようだ。
しかたがないと、バックパックを背負った時に、中からおじいさんが出てきた。
このおじいさん、イタリア気質丸出しで、人懐っこい。
私もすぐに楽しくなり、会話が弾むうち、わしについてきなさいと手招きしてくれる。
ついていきながらも、彼は日本人の友人の名前を連呼する。
辿り着いた先は駅から徒歩1分のB&B
高いんじゃないのかなぁ~と思いながらもエレベーターに乗って最上階まで行った。
ベッドは言う事なし、景色グッド、トイレ、バスルームも中級ホテル並だ。
恐る恐る値段をい聞くと、やはり4人部屋の最安でも40ユーロ。
確かに、それでも安いのはわかるが、予算に合わないので断ると、5ユーロ下げてきた。
いやいや、そういう問題じゃなく、20ユーロ以下で探しているんだと言うと、朝食抜きで、もう5ユーロ下げてて30ユーロになった。
私も暫く考えて、25ユーロだったら泊まりたいと伝えると、首を横に振りノーサイン。
それではと、重たいバックパックを背負うと、なぜかオッケーサインが出た。
少し予算オーバーだけど、いっかと、宿のオーナーと堅い握手をした。
勿論、連れてきてくれたおじいさんにも笑顔で握手を交わし、さよならした。
久しぶりの良質のベッドで、テレビも冷蔵庫も付いている。
私は思わず口元がほころび、ベッドに横になりながら窓から見えるナポリの空を眺めていた。