こっちの行き方のほうがいいだろう。
いや、こっちのルートのほうが早い。
と、前に座っているおじさん2人から教えてもらっている。
私は今、レッジョ、デ、カラブリアというイタリア本土の先端の街まで行こうと、メタポントからカタンザーロ行きの列車の中にいる。
そこへ、また別のおじさんが加わり、地図を広げ、インターネットを使い調べてくれる。
私は、ゆっくりとイオニア海を眺めつつ、南下しようと思っていたのだが、カタンザーロ以降は列車がないと、一人のおじさんは言う。
結局、シバリで降り、カセンザ経由で行くことにした。
地図を眺めているうちに、確かにそのほうが効率がいいように思えてきたからだ。
どこでもよかった。
どこでもよかったが、できればシチリアに渡りたかった。
行けるところまで行って、そこで泊まろうと思っていた。
シバリで1時間、カセンザで1時間半を待つことになったが、割と効率よく、ビラ、サンタ、ジョバンニという、シチリア島に渡れる町に16時30分に着いた。
その後フェリーに40分くらい乗り、シチリアのメッシーナに着く頃には、今日の最終地点をタオルミーナに決めていた。
バスの待ち時間である1時間半でメッシーナの街並みを散歩し、30分遅れのバスが発車したのは20時20分だった。
バスから眺めるイオニア海が、私の気持ちを静かにしてくれる。
いくつかの町を通り過ぎ、タオルミーナの町に入ったのは21時30分くらいだった。
バスは山の斜面をどんどん登って行く。
街灯で照らされたイオニア海を眼下に眺め、高級ホテル、高級レストランをくぐり抜けながらさらに登っていくと、タオルミーナの全容が見えてくる。
眩いまでにちりばめられた、それらの光に目眩をおこしそうになる。
今までになかったこの感覚を味わえただけでも、ここに来て良かったと思っていた。