夢を見た。
はっと、目覚めた時には、いくら思い出そうとしても、夢の内容を思い出せないでいる。
外の街灯のオレンジの光が窓ガラスに映っている。
頭がクラクラする。
遠くから手拍子と共に歌が聴こえてきた。
まぎれもなく、ロマの音楽だ。
起きて走り出そうとしても、体が動かない。
ベッドの中でうずくまっている。
だんだん、はっきりとそれが聴こえてくる。
旧市街の石畳に反射して、音が陽炎のように浮かんでいる。
嬉しくなっている自分がいる。
思い描いていた音楽に心が弾む。
ここにも確かにロマ民族が根付いている。
やがて、その音がすーっと消えていく。
私は夢心地で静かに眼を閉じた。