彼とはメクネスで安宿を探している時に出会った。
それぞれ数軒の安宿をチェックしているうちに、部屋をシェアしようということになった。
結局、最安のところに決まった。
彼はポーランドから来た青年だった。
お互い腹が減っていたので、食事に出かけた。
私は暇そうなおじさんを見つけては安食堂の場所を聞き、そこに行こうと誘ってみる。
まあ少し高いけど腹も減ってるしいいんじゃない、と即すが、彼はなかなか納得しない。
そのうちメディナに入り込むが、彼は臆することなくずんずん進んで行く。
今日は金曜日。ほとんどの店は閉まっていた。
20ディルハムでタジンを食べられるところを地元の青年に紹介してもらうが、まだ彼は首を横に振る。
今日は休日なんだし、このへんで妥協しないと食えなくなるぜ、と私は言うが彼は信念を曲げない。
結局、よく喋るおっさんに紹介してもらった、メディナの反対側を出たところの安食堂で彼は納得した。
昼飯を食べるのに4~50分歩いたことになる。
途中で別行動をとろうと思ったくらいだった。
しかし、10ディルハムでクスクスチキンという超安の食事にありつけた。
彼の写真は活き活きしている。
彼と一緒に歩いていると楽しい。
私は普段、部屋をシェアしたぐらいで行動を共にしたりはしないのだが、彼とはなぜか一緒にいると和むのだ。
それからは、ここメクネスでは一緒に動くことになった。
おじさんが羊と散歩している、と思っていた。
彼も、ほら、変わった犬を連れているぜ、と冗談を言っていた。
しかし違った。
おじさんは小さな棒を持って羊を追払っていたのだ。
羊は少し怯むが、おじさんに猛アタックを繰返していた。
おじさんはグーでなぐったり、手の平で思いっきり引っぱたいたり、首を掴んで左右に揺すったりしていたが、羊はダッシュしおじさんに頭付をする。
これにはポーランド人と腹をかかえて笑った。
ポーランド人のケチぶりは凄かった。
タクシーとの交渉はあっさりしているものの、自分で決めた値段でないと絶対乗らない。
すべてのタクシーと交渉するかの勢いだった。
5キロメートルの道のりは、ヒッチしようと歩き出し結局最期まで歩いた。
あと1キロだから1ディルハム(14円)だなんて・・・。
有り得ない数字をたたき出す。
そんなわけで、通常の旅行客が320ディルハムかかるところを、27ディルハムで済んでしまった。
私もケチさでは自信があるほうだが、彼のそれには本当に呆れた。
ポーランド人恐るべし!