刃を研ぐ音が四方から聞こえてくる。
ヤギが次々と殺されていく。
手足を縛られ、数人の男たちに押さえ付けられ首をかき切られている。
鮮血が流れ出し、地面を真っ赤に染めていく。
その数は家族の数と等しい。
緑生い茂る木下で、15ひきのヤギが首を切断され、もう、ぴくりとも動かない。
家々からはのんびりとしたレゲエが流れている。
12月20日、21日はムスリムのクリスマス、タバスキが行われる。
その早朝からヤギの鳴き声が、鳴き止まない。
最後の抵抗か、その声が町中に響きわたる。
とても悲しい響きだ。
海では男どもがヤギを洗っている。
朝日を浴び、ヤギの白い体が光っている。
町中がそわそわしている 。
皆、とっておきのおしゃれをし、集会場に集まる。
祈りの儀式はカラフルな原色で彩られる。
小さな子供たちもヤギの儀式を凝視している。
誰も泣いたりしない。
ヤギの頭をおもちゃにしはしゃいでいる。
私は直視できない。
その後、すべてを解体しバーベキューでお祭りを楽しむ。
ヤギの血は木の下に全部集められ、そのうえから水を注がれる。
その木には、立派なミカンの実が沢山実っている。