プルママルカに降り立つと、おばさんが小さな紙切れをくれ、しきりに何かを言っている。
その小さな紙切れには、ワゴン車の写真といくつかのコピーが書かれていた。
どうやら、それは塩湖のツアーのようだ。
20ペソ(680円)で3時間半というので、私はおばさんにOKと言った。
塩湖と言えばボリビアのウユニが有名だと聞くが、アルゼンチン側にもいくつかの塩湖がある。
私は、そのウユニでさえ、旅人から教えてもらって初めて知った。
車は加速し、どんどん山道を登っていく。
私が、どのくらいの高さなのかと聞くと、隣の運転手は、涼しい顔で4000Mは超えるよ、と言った。
とたんに、私は息苦しくなり、深呼吸を始めた。
簡単に考えていた塩湖ツアーだが、いきなり4000Mとは····。
運転手が車を止めた。
さあ、写真を撮ってきな、と言われ外に出ると思わずぶるっと震え、小さい体がさらに縮こまった。
そうとうに寒い。そして、頭がクラクラする。
そう、そこは4170Mの山の頂上だった。
アルゼンチン人たちがふざけて記念写真を撮っている横で、私は青ざめていた。
再び車に乗り、暫く走ると、ようやく山の隙間から白く煌めく塩湖が見えてきた。
私は心の動揺を抑え、水を飲み、しきりに深呼吸をしていた。
塩湖は凄い。
真っ平なそこは、360度どこまでも真っ白だ。
サングラス無しでは目が焼けそうだ。
彼方にはアンデス山脈が連なっている。
塩を積んだトラックが行き来している。
掘り起こしたところは、水色の塩水のプールになっている。
裸足で歩いてみる。
塩が刺さって痛い。
プールに足をつけるとヒリヒリと痛い。
同乗したアルゼンチン人たちが、走ったり滑っている横で、私はゆっくりと歩き、深呼吸に余念がなかった。
帰っている途中で、運転手のおじさんは、時折、道路に転げ落ちている小さな岩をどけるため車を止める。
工事中のところは、土埃が立たぬようゆっくりと車を進める。
その気心に、私は心の中で拍手を送っていた。