この島の虜になっている若者が、カニを沢山採ってきてくれた。
明日はカニ料理だ。
その夜、私の寝床でガサゴソ音がしたので懐中電灯で照らすと、そのカニが遊びに来ていた。
食べ物を荒らされると困るので威嚇し追い出した。
朝起きると、昨日カニを採ってきた若者が嘆いていた。
カニが逃げていたのだ。
一匹だけを残し、カニが逃げてしまった。
それでも、その一匹だけのカニは美味しい魚料理の出汁となった。
夜、海沿いを懐中電灯で照らしながら歩くと、そこらじゅうにカニがいる。
大きい青いカニや中ぐらいの赤いカニ、そしてちいさな透明のカニが足元で動いている。
カニは夜行性なのだろう。
また、カニを踏んづけてしまったようだ。
今度はグシャという鈍い音がしたので、おそらく死んでしまっただろう。
私は、よけながら歩いているつもりだが、それほど、ここはカニだらけなのだ。
それにしても、夜の散歩は楽しい。
ガサゴソと音がして、何かが動いているのを感じているだけでゾクゾクする。
懐中電灯で照らしながらカニと追いかけっこをするのが病み付きになってしまった。